漫画の描き方ってびっくりするほど人それぞれなんですが
(いろんな職場にいってみるとわかる。
私はリタイアしていた一時期、人のアシスタント業もやっていた)
毎回毎回〆切を守れずひーひー言ってた作家さんが
時間短縮のために編み出したスタイルは
一部私のところでも継承されている。
そのひとつが「ネームトレース」。
※ネームとは、下絵の前の「話づくり」のことです。「コンテ」とも言います
ネームは話の流れを(編集者等に)わかってもらうものだから
原画と同じサイズである必要はなく、
人によってA4で描いたりA4やB5を半分に割ったり
B4の投稿サイズ原寸で描いたり
鉛筆描きだったりサインペンで描いてあったり
定規で丁寧に枠線引いてたり
PCでつくってフォントまで打ってたり
セリフしか打ってなかったり(人物は丸チョン、もしくは名前だけ)
・・・まぁここんところから人それぞれなんですが、
私はB5用紙に鉛筆でノー定規、紙面いっぱいに描いていまして、
それを105%で拡大コピーする。
A4用紙にちょっとだけ大きくコピーする。
(あくまで外枠18×27cmの投稿用サイズに収まりがいいように。
100%でもいい気がしますが、なんとなくの体感です)
原稿用紙の裏にドラフティングテープで張り付ける。
表に返してトレース台に乗せると下の用紙の線がうつるので、
何も考えずにネームどおりに枠線をひく。
(私が使っているのはメモリ付きの原稿用紙なので
35センチの長い定規を使って
メモリに沿えば長辺でも一気に垂直線が引けます)
すでに「アタリ」ができている状態なので、
何も考えずにネームの位置の吹き出しを写し取る。
同じく人物も。「アタリ」の上をラクラク下絵作業。
・・・しかしこれは
私や友人作家がアタリに相当するような
「こまかいネーム」を描くから有効な方法なんですけどね。
「丸描いてチョン」派の人は
原稿用紙の前で構図やらカット割りを考えるからいらぬ工程かと。
ネームトレースから下絵なしで
一気にペン入れすりゃいいじゃねーかと
思われるかもしれませんが、無理です。
私そんなに絵うまくない。
ネームのときに洋服とかまで考えていませんしね。。
以前TVの取材を受けたことがあるが、
こんな作業はぜったい映されない。
(漫画制作で人の関心をひくのは主にペン入れのようだ)
ネームのコピーをひたすら原稿用紙に貼っていくのは
見た目にもかっこわるくて退屈極まりない作業だが、
「急がば回れ」という言葉を実感させられる。
めんどくさいを乗り越えて
この段階を丁寧にやっておくとあとがラクになる。
作業効率とは、どんだけ早くやるか、でなく
どれだけ考えずに(疲れずに)できるフローを作れるか、だと思う。
現場には厨房の「まかない料理」みたいに
隠れた知恵工夫があったりするんですね。
原稿用紙の裏にまでページ番号を打つのも
<知恵>のひとつである。(ふつーは表のみ)
できた原稿を裏っ返して置いたりすると揃えるときに見失うからだ。
(忙しい時にページが見当たらないのはストレスになる!)
しかし漫画制作ソフトができて便利になったのは
仕上げのときだけで、ここらの工程はずーーっとおんなじだわぁ・・・
線画をアナログにこだわる限りはこの過程を踏むのです。
ああ伝統のマニュファクチュア。
いまやってるNTT東日本のCMで
イチローはなぜ、
同じ毎日を
くり返しているのに
未来をつくれるのか。
確かな一歩の積み重ね
遠くへは行けない。
通信の未来も、
確かな今日の積み重ね
つくられていく。
ってナレーションがあるけど、
ものつくりに携わる人間としても
まったくそのとおりだなぁ、って思う。
ああだこうだの「おハナシ」では前に進まないのだ。
こんな地味で具体的な作業の連続でしか。